阿呆が

枢機王

枢機王

「……枢機戦争が終わって二十年。いまだに傷は癒えず、か」

 発せられた声には、量りようのない疲労が充満している。 

 枢機戦争。 

 始まりは今から千年前。人類が他星系への移住を開始し、地球上の人口が急激に減少した時期があった。減少した労働力を補う為に一層のオートマティック化が図られ、それは確かに成功したのだ。

 だが、今から五百年程前。

 突如として人類に反乱を起こした者がいたのだ。

 人類が生み出した機械達。その中には人工知能を持った自律活動型アンドロイドもいた。機械達の盟主の名は『枢機王』。その正体は太陽系を我が手に掴み取ろうとした人間だとも、人間以上の高度な自我を持ったアンドロイドだとも言われている。

……もっとも、彼の真の姿は、戦争が終結した今も闇の彼方……

 コロニーは悉く破壊され、叡智の結晶であった通信手段も思わぬ奇襲によって鉄くずと化し、彼等の反乱から僅か数十年で、太陽系の人類は最終拠点として地球に立て篭もらざるをえなかった。

ありとあらゆるコンピューターの守護者として統括していた擬似人格達は、枢機王の手によって彼の傀儡と化し、栄華の象徴と言っても過言ではない軍事兵器『自動装甲歩兵』をはじめとする自律機械も、知能を備えたアンドロイドによってその全てが枢機軍に与してしまった。全時代的な戦車や戦闘機といったものでは、彼等に抗する事など到底出来なかった。