着替え
数年前から志水学園は『優秀な人材を集め、社会に利益を与える人間の創出』のコンセプトのもと、様々な推薦入学が行われている。翼の場合は学力優秀、授業態度良好、文武両道と模範生のような生徒であった事に加えて、孤児であった事が幸いした。
『経済的に学業を修めるのが困難な生徒に機会を』という名目で簡単に推薦は通った。
「コンタクト付けたらはやく着替えてくれよ。今日は入学式なんだぜ?」
卓の声で翼は思考から引き戻される。流石に入学式に遅刻するのは、大抵の事は笑って済ませてしまう卓であっても避けたい事柄なのだろう。
鞄にはすでに必要なものは詰め込んである。
「うん。すぐ着替えるから、ちょっと待って」
パジャマをポイポイと脱ぎ捨て、ズボンをはきはじめる。それから安物のベルトをして、椅子に座って無地の靴下を履く。それからブレザーを羽織って歩きながらボタンをしめる。鞄を手に持ち、机の引き出しから財布と鍵を取り出し、ポケットの中に突っ込む。
全ての準備が整い、部屋を出ようとしたその時、翼の足が止まった。