恐ろしい
……は、こなかった。代わりに押し寄せてきたのは、ラケット片手に凄まじい形相で迫ってきた女子、白の鉢巻に昔風の黒い学生服を着込んだいかつい男、生徒会という腕章をつけた真面目そうな女生徒に、ワイシャツ蝶ネクタイとばっちり着込んでいるお兄さんお姉さん、サッカーボールを持ちながら哀れな子羊の手を握って離さない日焼けした男、青白い顔で怪しげな緑色の液体を試験管に入れている男子生徒もやはり困惑する犠牲者の腕をつかんでは離さない。そこにバイオリンやら小太鼓やら様々な楽器を持っている人々がプーパカプーパカ変てこな音を奏でながら彼の襟を正面からむんずと引っ張り、牛乳瓶の底を思わせる程厚い眼鏡をかけた暗い雰囲気を漂わせるオタク的な生徒は新入生の背後に音もなく忍び寄っている。生徒は四つに引き裂かれそうな勢いで金きり声をあげていた。もしくは断末魔と表現した方がいいかもしれない。野球部の面々にいたっては金属バット片手に断ったらバットを脳天に振り下ろしそうな勢いだ。彼等が通る所は恐慌の悲鳴が次々と巻き起こっている。他にも格闘系のクラブは体育館内の異様な雰囲気を利用して実演と称しては脅迫し、文化部の者達は検察官もかくやという巧みな誘導尋問で獲物を一人残らず捕獲してゆく。