阿呆が

幽霊?

幽霊?

「あ〜……志水学園名物、恐怖の部員勧誘って、入学式終了直後にやるんだ」

 迂闊だった、と翼は呟きながらこれからどうするべきかを思案していた。あの後もしつこい追跡をする在校生を振り切るために卓と翼は二手に分かれた。 

体育館にまで押し寄せてくるような連中だ、学食にも勧誘員がいると考えた方が良い。

 でもそうなると、昼食をどうするかという深刻な問題が……

「……あれ?」

 翼は、小首を傾げながらあることに気付く。

先程から同じ道を行ったり来たりしているような気がする……

「ひょっとして、この年になって迷子?」

そりゃないよ、と情けない声を喉から絞り出す。とりあえずは周りにいる人に道を尋ねて教室に戻ろうと気を取り直そうとする。

だが、

「……歩いても歩いても人に会わない」

というより蛍光灯のついている教室そのものがないのだ。

「あの状況じゃ、新入生は体育館からそう簡単にには出れないだろうし、在校生も体育館に総力を投入しているだろうから……」

言いかけて、冷たい汗が背中を流れる。

つまり、今、この一帯は無人……

「……まさか、こんな真っ昼間から幽霊なんか出ないよね」

幽霊は苦手なのか、顔を青くして翼は気弱そうに笑う。

一帯は使われていないのか、廊下はうっすらと埃に包まれている。廊下の蛍光灯がぱちぱち音をたてながら、と消えたりついたりして翼の恐怖を煽る。建物の配置の関係からか、陽光が窓から全く差し込まず、影と薄暗い人工の夜が、静寂という名の支配によって空間を包んでいる。