阿呆が

ダークランド

ダークランド

衝撃は彼の背後から襲ってきた。突如として高分子外郭で作られた胴が、一本の剣に貫かれている。剣は微弱な振動を起こしながら、そのまま頭部まで切り上げられる。

装甲歩兵に流れる潤滑油が、灰色のローブに飛び散り、自動人形は左右対称に斬り開かれ、砂に倒れむ。僅かな土埃が巻き起こり、それがもう動かぬことを覆面は慎重に確認する。

 百万以上の分子量を誇る高分子外郭をあっさりと破壊させた剣は、しかし刃こぼれ一つない。分子振動を停止させ、覆面は剣についた油を振り払う。砂地にビシャ、とオイルが撒かれる。

「……さて」

これからやるべきことはたくさんある。

 砂に覆われた大地の緑化、機械に蹂躙されし都市の復興、魚類も住めぬ程汚染された海洋の浄化……核融合発電所を破壊されたことで生じた放射能地帯『ダークランド』と、天候制御システム『ハーブ・システム』によって傷付いた電離層の回復は時の流れにまかせるしかあるまい。

ようはそこに人類が住まないよう封鎖を施せば良いのだ。

 「……そして、私の使命は、進みすぎた文明の封印……特にこのアスティーユの遺産……セブンス・ギルティだな」

 呟きと共に鋼鉄の翼が折り畳まれる。

忌わしき戦いの記憶。その全てを封印しなければならない。

 これは、容易に破壊する事は出来ない代物だ。

 戦いに勝ちはしたものの、人類はその代償として文明の力の大半を失ってしまった。もはやロスト・テクノロジーと言っても良いこの兵器の全てを破壊することは困難極まりない。

 出来る限り、人目につかぬ土地にこれを封印しなければ。

 「……絶望している暇はない」

 砂海の水平線を見上げ、覆面は見果てぬ未来へと歩き出した。

 そして、舞台は現代へと移る。