阿呆が

ラック

ラック

「行くなぁぁぁ!」

右手を虚空に伸ばし、叫びながらベッドから跳ね起きる。

ゼエゼエと荒い吐息は部屋に静かに響き渡る。

額に流れる汗を手の甲で拭い、呼吸が落ち着いてから、

「……またか……くそ、しっかりしろよ、僕」

独白し、頬を両手でパーン、と景気良く鳴らす。

ベッドから起き上がり、視線を周りに巡らせる。

がらんとした、木製の机と椅子。机にあるのは目覚し時計と腕時計、それからコンタクトとそれを付ける為に必要な鏡。脇に設置されているのは教科書だけが入れられた小型のラック。なぜかラックの脇には通学用の鞄が立てかけられており、上に置かれているのは歯ブラシとコップ。タンスが無い為に服は畳んで床に置かれていた。それから少年の位置からは死角になっているが、ベッドの下には洗面用具一式が置かれている。

かなり殺風景だが、仕方がないとも少年は思う。

「これ以上、寮長さんに迷惑かける訳にもいかないしな」

その場で伸びをして、軽く屈伸する。

申し訳程度に付けられた安物のカーテンを開ける。視界には眩しい光が差し込んで来る。続いて窓を開けると、耳には小鳥の囀り声は聞こえて……こない。代わりに聞こえてくるのはやかましい車の排気音だ。