小鳥の囀り
「……小鳥の囀りだなんて贅沢言わないから、せめてカラスの鳴き声にしてよ」
がっくりとうな垂れながら少年は、排気ガスが漂う空気を遮断する為に窓を閉じる。
時計に視線を向ける。
七時半丁度。
そろそろ着替えて登校する準備を始めた方がいいだろう。
いくらなんでも入学式に遅刻だなんて恥ずかしくて目も当てられない。
椅子に座り、鏡をこちらに手繰り寄せる。それからコンタクトの入った箱を開ける。まず手始めにコンタクトを付けなくては。黒のカラーコンタクトだ。矯正的に視力を上げる品ではない。ただし、左目だけ。右目の視力は普通に良い。左眼の視力も悪い訳ではない。むしろ右眼よりも弱冠良い位だ。しかし、このまま左目にコンタクトをせずに登校すると、とにかく周りがうるさくなる。その予防の為には必要なことなのだ。